Report.10 医療のまちの「地域とのつながり」〜コミュニティナースと一緒に考えよう

今回のシモツケ大学は、コミュニティナースとして活躍するゲストの方と一緒に、地域や人とのつながりについて考えてみる講座です。

医療従事者の多いまち下野市

下野市は自治医科大学付属病院をはじめ、総合病院や専門のクリニックも多く、人口1人あたりの医師数が日本一になった記録もある医療のまちです。しかも住民の23パーセントが医療福祉関係の従事者です。そんな下野市でもこのコロナ禍の影響は大きく、孤立し周りに相談できる環境がない人もいます。

日々の困りごとに寄り添い、病院ではなく地域で活動する”コミュニティナース”という存在が下野市でも生まれているそうです。そんなコミュニティナースの活動を詳しく聞くために、今回は3人のゲストをお呼びしました。

コミュニティナースによるキートーク

まずは、下野市でコミュニティナースの活動を始めた髙山由香利さん。自治医大付属病院で看護師として緩和ケアを主に担当していました。30代でがんになり、闘病中に相談できるところがないと感じた経験から、医療だけでは病は治らないと気づきました。現在はand nurseとしてコミュニティナースの活動を実践中。

二人目のゲスト、田中康代さんは25年間自治医大附属病院に、がん化学療法看護認定看護師として勤務しています。ある時ご自身のお母様ががんを発症し家族として支える立場になり、多忙な病院勤務の中では本当に支援を必要としている人になかなか手を差し伸べられないジレンマに悩んでいました。2020年にがんを経験した女性のためのサロン「にこりっと」をオープンしました。

そんな2人は意気投合し、下野市で一緒にコミュニティナースの活動を進めています。

髙山由香利さん

田中康代さん

みなさん医療・看護等の専門職とコミュニティナースの違いはご存知でしょうか?

・医療者:対象が患者や利用者・事故的かつ非日常
・コミュニティナース:対象は全地域住民・予防的かつ日常的・住民の目線で一緒に。

地域全体で、日常的に健康について意識を配っていくために、コミュニティナースは活動しているようです。

他にも栃木県内ではコミュニティーナースの方がいます。定期的に暮らしの保健室を開いたり、移動スーパー&おでかけスタイルの保健室を開設していたり、行政からの委託で病院受診に同行などをしています。

髙山さんたちも『コミュニティナースとお話ししませんか@天平の丘公園』を10月に2回開催しました。病院に行くまでではないけれど心や体に不安に感じている、医療や介護、育児の困りごと、誰かに話がしたいなどどんな内容でも受け付けました。

また、小さなイベントに参加するなど、顔なじみの関係を作るところから始めています。そこで様々な方とお話をする中で、病院とは違う、公園という「環境」は語りを促進する、ため込まないで話すことは大切、自分の力を取り戻す過程に伴走すること、そんな気づきを得ることができました。


これからの展望としては、
・ここに行けば会える『居場所』をつくること
・必要な人に届くような情報を『伝える』こと
・もともとある社会資源につなぎ、専門家や社会福祉協議会など相談できる場に『つなぐ』ことを目指して活動していきたいと語ってくださいました。

参加者からは「お金も払わずに専門家に相談していいの?」と質問がありましたが、
「お友達だと思ってなんでも相談してほしい。人に話すことで解決になるパターンも多いので、些細なことでも話してほしい。」とお答えいただきました。心強いですね。

先輩コミュニティセラピストの登場

最後のゲスト、徳島県小松島市で「みんなのヒュッゲ」の取り組みをしている本岡さんのお話を伺いました。本岡さんは理学療法士として活動しているうちに「病気になってからでは遅い!」と、介護予防の分野に興味を持ち、地域での活動を模索し始めました。「みんなのヒュッゲ」を立ち上げ、屋台で珈琲を提供しながら健康相談にのったり、地域活性化のためにショッピングセンターの空きスペースで無料ヨガ教室を開催しています。

コミュニティセラピストの活動だけではなく地域活性化も視野に入れての活動として、つながりを大事にした活動を、下野市でも何かできないかと考えさせられました。

本岡さんの取り組みを聞き、コミュニティナースとして話を聞く場所を模索している髙山さんは、屋台でコーヒーを提供しながらのスタイルは怪しまれずに話を聞けるので、とても参考になったと話していました。他の参加者の方も、屋台スタイルに興味を持ったようで、「屋台はどのくらいで作れるのか?」「場所はどのくらいで借りているの?」などの質問が出ていました。下野市でも屋台を見かける日も近いかもしれませんね!!


参加者からの質問で私がハッとなった部分がありました。
「医師・看護師と患者の間には大きな壁がある」
囚人とまではいきませんが、番号1番の方、2番の方…。なんとなく無機質な対応に少し寂しさを感じます。

私が東京の大きな病院で初めて妊婦検診を受けた時に感じた感覚を思い出しました。初めての妊娠で敏感になっているときです。ぞろぞろと順番に流れ、1分ほどの診察。ベルトコンベアに乗せられた部品のように感じ、寂しい気分になり出産まで不安になりました。

医療を地域の中でフラットにしていく。

コミュニティナースとして、地域の人とつながり、まちを元気にする。病院でも、在宅医療でもない、身近な場所で地域の人の健康を引き出すような関わりをすることで、その人ならではの専門性を生かして地域住民の心と身体の健康を願って活動をする人。
必ずしも看護師さんではなく、医療の分野だけではない「コミュニティパーソン」という呼び方もできそうです。


「あなたらしいコミュニティナースを始めませんか?仲間募集中です😊」
コミュニティナースのお二人は、仲間を募集しています。
これを機に、私たちが地域の中でできることはなにか、考えてみませんか?

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